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東京地方裁判所 昭和52年(特わ)288号 判決

本籍

北海道三笠市弥生橘町三一番地

住居

東京都調布市西つつじケ丘一丁目二〇番八号

第二石井コーポ三〇五号室

歯科医師

木下功

昭和一三年三月二二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官河内悠紀出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月及び罰金二八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五〇、〇〇〇円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から四年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、昭和四〇年七月歯科医師の免許を取得し、各地の医院、診療所等に勤務した後、同四六年七月一七日頃東京都府中市八八七一番地において「けやき歯科医院」を開設したほか、同四七年七月一七日頃同都国分寺市南町三丁目一六番六号太陽ビル内において小野里道博名義を以て「あおい歯科医院」を、同五〇年六月四日頃同都調布市布田一丁目四一番一号菊屋ビル内において木下公子名義を以て「森の泉歯科医院」をそれぞれ開設し、自から右三医院を経営する傍ら(但し、同四九年四月以降右あおい歯科医院を前記小野里道博に譲渡)、同四八年一月頃から収益の一部を貸付金として運用し、利息収入を得ていたものであるが、自已の所得税を免れようと企て、自由診療収入の大半や利息収入の全部を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四八年分の実際総所得金額が七八四六万五九四七円あつた(別紙(一)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同四九年三月一五日同都府中市内から渋谷区宇田川一丁目三番渋谷税務署長あて同年分の総所得金額が一四三七万四一〇八円でこれに対する所得税額が四二四万二八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告

第二  昭和四九年分の実際総所得金額が七一四二万六一八九円あつた(別紙(二)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同五〇年三月一五日前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が一八三六万一四二〇円でこれに対する所得税額が四六九万六四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同号の符号二)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、以て不正の行為により同年分の正規の所得税額三八〇八万一六〇〇円(税額の算定は別紙(四)の税額計算書参照)と右申告税額との差額三三三八万五二〇〇円を免れ、

書(昭和五二年押第一一六三号の符号一)を郵便にて発送提出し、そのまま納期限を徒過させ、以て不正の行為により同年分の正規の所得税額四四二七万〇六〇〇円(税額の算定は別紙(四)の税額計算書参照)と右申告税額所得との差額四〇〇二万七八〇〇円を免れ、

第三  昭和五〇年分の実際総所得金額が六三八三万五七七九円あつた(別紙(三)の修正損益計算書参照)のにかかわらず、同五一年三月一五日前記渋谷税務署において、同署長に対し、同年分の総所得金額が一九二一万六一二七円でこれに対する所得税額が四七二万一二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書(前同号の符号三)を提出し、そのまま納期限を徒過させ、以て不正の行為により同年分の正規の所得税額三一六七万九七〇〇円(税額の算定は別紙(四)の税額計算書参照)と右申告税額との差額二六九五万八五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

第一  判示冒頭事実を含む判示事実全般につき、

一  被告人の当公判廷における供述並びに検察官に対する供述調書(三通)及び大蔵事務官に対する質問てん末書(四通)(乙1ないし7)

一  野口由紀江の検察官に対する供述調書(二通)及び大蔵事務官に対する質問てん末書(三通)(甲(一)20ないし24)

一  小野里道博の大蔵事務官に対する質問てん末書(甲(一)25)

一  北条和雄の検察官に対する供述調書(甲(一)26)

第二  別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「当期増減金額」欄記載の数額のうち、

一  各年分の事業所得中、

(イ) 社会保険診療収入、自由診療収入、雑収入、原材料仕入、租税公課、水道光熱費、旅費通信費、事務用品費、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、修繕費、消耗品費、福利厚生費、給料賃金、地代家賃、外注加工費、諸会費(昭和五〇年分を除く。)、図書購読料(同上)、支払手数料、賃借料、雑費、退職金(同四九年分のみ)、共同経費(同五〇年分のみ)につき、

一 大蔵事務官作成の元帳、現金出納帳集計表(甲一2)

(ロ) 期首棚卸原材料、期末棚卸原材料につき、

一 大蔵事務官作成のたな卸原材料調査書(甲一5)

(ハ) 減価償却費につき、

一 大蔵事務官作成の減価償却資産の償却費および未償却残高調査書(甲(一)7)

(ニ) 利子割引料につき、

一 大蔵事務官作成の借入金及び利息調査書(甲(一)8)

(ホ) 社会保険診療の経費差額につき、

一 大蔵事務官作成の東京地方検察庁検察官河内悠紀あて「社会保険診療の経費差額に関する回答について」と題する書面(甲(一)9)

(ヘ) 昭和五〇年分繰延資産償却費につき、

一 大蔵事務官作成の繰延資産の償却費に関する調査書(甲(一)14)

(ト) 昭和五〇年分青色申告控除額につき、

一 渋谷税務署長作成の証明書(甲(一)17)

二  各年分の雑所得中、

(イ) 貸付金利息収入につき、

一 大蔵事務官作成の貸付利息(雑所得)調査書(甲(一)18)

(ロ) 支払利息につき、

一 前掲甲(一)8に同じ。

三  昭和四九年分譲渡所得につき、

一 大蔵事務官作成の譲渡所得に関する調査書(甲(一)19)

第三  別紙(一)ないし(三)の各修正損益計算書掲記の各勘定科目別「公表金額」欄記載の数額及び過少申告の事実につき、

一  押収にかかる被告人名義の昭和四八年ないし同五〇年分所得税確定申告書各一綴(昭和五二年押第一一六三号の符号一ないし三)

(法令の適用)

法律に照すと、被告人の判示各所為はいずれも所得税法第二三八条第一項に該当まるところ、所定刑中いずれも併科刑を選択するとともに各罪につき情状により各同条第二項を適用してその罰金額は五〇〇万円をこえその免れた所得税の額以下とすることとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重いと認める判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内、罰金刑については同法第四八条第二項により各罪につき定めた罰金の合算額以下において被告人を懲役一年六月及び罰金二八〇〇万円に処し、同法第一八条により右罰金を完納することができないときは金五〇、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、諸般の事情を考慮して同法第二五条第一項を適用し、この裁判確定の日から四年間右懲役刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 半谷恭一)

別紙(一) 修正損益計算書

木下功

自 昭和48年1月1日

至 昭和48年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二) 修正損益計算書

木下功

自 昭和49年1月1日

至 昭和49年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(三) 修正損益計算書

木下功

自 昭和50年1月1日

至 昭和50年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(四) 税額計算書

木下功

〈省略〉

註1 78,124,000×70%-8,284,000=46,402,800

税額計算書

木下功

〈省略〉

註2 71,042,000×70%-9,761,000=39,968,400

税額計算書

木下功

〈省略〉

註3 63,164,000×70%-10,240,000=33,974,800

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